高脂血症

高脂血症

日本動脈硬化学会は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」を発表し、従来「高脂血症」と呼んでいた病態を、「脂質異常症」と呼ぶように提言しました。
「高脂血症」だと、善玉のHDLコレステロールが少な過ぎる状態を指す「低HDLコレステロール血症」を含む病名としては適切ではないためです。
しかしここでは従来通り高脂血症と呼ぶことにします。
コレステロールを高いまま放置しておくと「動脈硬化」が進展し、「心筋梗塞」や「脳梗塞」などの危険な病気を引き起こしやすくなります。
しかし、痛みなどの症状が伴わないため、検査を忘れてしまいがちです。
コレステロールが気になったらご相談ください。
そしてコレステロール値の管理に欠かせないものはご家族の協力です。
これを機会に生活習慣を見直しご家族と一緒にコレステロールの管理を始めてみませんか?

脂血症の原因

高脂血症となる主な原因は、大きく分けると以下の4つになります。
1)遺伝的な異常によるもの
2)食生活などの生活習慣によるもの
3)他の病気の影響によるもの
4)加齢によるもの

中高年に見られる大部分の高脂血症は、遺伝的素因に加えて食生活の偏りが原因です。
これに、もともと持っている遺伝的に高脂血症になりやすい体質が重なると、高い頻度で高脂血症が発症します。
特に食生活の影響は大きく、高カロリーの食事、コレステロール・飽和脂肪酸・糖質などを多く含む食品、アルコールの取り過ぎは、コレステロールや中性脂肪を増加させてしまいます。
また、運動不足による肥満は、肝臓でつくられるコレステロールや中性脂肪を増加させます。
肥満した人に高脂血症が多いのはこのためで、高脂血症を引き起こす最大の原因は太りやすい生活習慣なのです。
また女性は閉経までの間、エストロゲンという女性ホルモンが分泌されています。
エストロゲンが分泌されている間は男性に比べて動脈硬化になりにくく、動脈硬化による病気である心筋梗塞などになる確率も男性に比べてとても低くなります。
しかし、閉経後はこのエストロゲンが極端に低下するため、動脈硬化が進んでいきます。
エストロゲンにはコレステロールを下げる働きがありますから、エストロゲンが低下するとコレステロールは上昇します。
またエストロゲンおよびプロゲステロン(排卵があると上昇するホルモン、黄体ホルモン)には内臓脂肪を増えにくくする働きもあります。
内臓脂肪が増えると中性脂肪が上昇します。閉経後、しばらくして内臓脂肪が蓄積してくると徐々に中性脂肪が上昇しやすくなります。
妊娠中も中性脂肪やコレステロールが高くなります。通常妊娠中の高脂血症はお産後正常に戻るので、特に治療の必要はありません。

症状

高脂血症は、高脂血症だとはっきりわかる自覚症状がないため、症状だけで高脂血症を早期発見することは難しいです。
しかし、高脂血症を放っておくと、増えた脂質がどんどん血管の内側にたまってしまい、そして知らないうちに体の血管が傷ついてしまい、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性があるため、定期的に病院での検査を受けることが重要です。

診断基準(空腹時採血)

  • 高LDL-コレステロール血症
  •  
  • LDL-コレステロール ≧ 140mg/dl
  • 低HDL-コレステロール血症
  •  
  • HDl-コレステロール < 140mg/dl
  • 高トリグリセライド(中性脂肪)血症
  •  
  • トリグリセライド ≧ 150mg/dl
この診断基準は薬物療法の開始基準を表記しているものではありません。
薬物療法の適応に関してはたの危険因子も勘案し決定されるべきです。

リスク別脂質仮目標値

治療方針の原則 カテゴリー 脂質管理目標値(mg/dL)
LDLコレステロール以外の
主要危険因子
LDL-C HDL-C トリグリセリド
一次予防
まず生活習慣の改善を行った後、
薬物治療の適応を考慮する
1
(低リスク群)
0 160未満 40以上 150未満
2
(中リスク群)
1~2 140未満
3
(高リスク群)
3以上 120未満
二次予防
生活習慣の改善とともに
薬物治療を考慮する
冠動脈疾患の既住 100未満
※ LDL-C以外の主要冠危険因子
 加齢(男性:45歳以上、女性:55歳以上)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症等)の家族歴、低HDL-C血症(40mg/dL未満)
※ 糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症があれば、カテゴリー3になります。

治療

高脂血症の治療の基本線は、「食事療法を中心とした生活習慣の改善」と「薬物治療」が二本柱となりますが、高脂血症は完全に治すのがなかなかやっかいな病気といわれています。
薬物治療ではLDLコレステロールを減らす薬剤や中性脂肪を減らす薬剤を使用しますが、薬物治療だけで完全に治すことはできません。
また、しばらく節制して数値がいったん改善したとしても、その後生活習慣が元にもどってしまったような場合は、再び高脂血症になってしまうケースも珍しくないのです。
さて、高脂血症の基準値に該当した場合、さらに詳しく検査をし、動脈硬化の危険性などを調べたうえで、治療に入ることになりますが、一般的には二段階で治療方針が設定されます。
「第1段階」と「第2段階」の2段構えで、脂質関連数値の目標値をそれぞれ設定し、生活習慣の改善や薬物治療によって、それに近づけていくことを目指すやり方をとります。
まず「第1段階」では、食事療法と運動療法が主体となり、薬物治療は無しか、あくまで補助的位置づけでの使用にとどまります。
「第1段階」で血清脂質が目標値に達しない場合は、薬物治療を並行して行い、食事療法もより制限を厳しくした「第2段階」へと進むことになります。
さて、上記のような医師の指導によるきちんとした治療を受けるところまでいかないまでも、いわば経過観察中の予備軍の方がすぐに実行に移すことができるのが、「生活習慣の改善」、すなわち「食事療法」と「運動療法」を実行することです。

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