現在の死亡原因の第1位はがんです。
10人に3人はがんで亡くなります。また、がんの原因の3分の1が『タバコ』、3分の1がお酒や食事や運動といった『タバコ以外の生活習慣』です。そして残りの3分の1は『運』といってよいものです。だからいくらがんに気を付けて生活をしてもがんを完全に防ぐことはできません。 がんと診断された場合、まずはじめに根治治療ができるのかどうかを考えなくてはなりません。局所にとどまり周囲に浸潤なく、転移の心配の無い場合は手術で切除すれば大丈夫でしょう。 しかし問題となるのは悪性度が高いケース、がんが周囲に浸潤している場合、転移の可能性がある場合です。 また手術を受けても5年以内に再発してくるケースです。 現在は手術,抗がん剤,放射線の三大標準治療が治療の中心になります。しかし再発を完全に防げないのが現状です。 そこで第4のがん治療法として『免疫療法』が近年注目されるようになってきました。なぜがんの第4の治療法として『免疫療法』が注目されているのでしょうか?それは、人が生まれながらに持つがんと闘う力=免疫細胞の力を強化することで、がん細胞を封じ込めることがわかってきたからです。免疫力を高めることで病気になりにくい身体を作り、がんと闘う力を備え、再発しにくい身体を作ることが可能です。また一過性の発熱などを除いて、治療に副作用はほとんどありません。免疫療法についてお話しする前に、なぜ免疫療法を当院で行おうと考えたかお話をします。 きっかけは2つあります。 1つ目は当院には併設施設としてResidential Care COSMOSがあります。ここは緩和ケア・終末期医療を提供する場です。しかし実際がんになってしまい、もうすでに既存の治療法では回復が望めない場合当然『余生を充実したものに』と考えることは正解です。 しかし『生きる可能性があるならば』治療をしたいと考える患者さまが存在することも当然です。 様々な情報が氾濫しておりますが、このような患者さまに対し標準治療以外に考えられる治療は免疫療法しかありません。 2つ目は私の父親ががんになってしまったということにあります。最初に発見された大腸がんが大きくて既存の治療では治癒は期待できないと思い、何か併用できる治療をと探していたところ数ある免疫細胞療法の中のANK自己リンパ球免疫療法(以下ANK療法)にたどり着き、良好な結果を得たという私自身の体験に基づいています。
免疫とは私たちの体には生まれつき体の中になかったもの、例えば異物や病原体が体に侵入してきた時にこれを排除して体を守る働きが備わっています。これを免疫と言います。 免疫には、体内に入ってきたものが自分のものか、自分のものでないかを区別する重要な働きがあります。 私たちの体は、60兆個もの細胞からできています。これだけたくさんの細胞が新陳代謝で定期的に入れ替わっていきます。ちょっと汚い話で恐縮ですが、皮膚は定期的に入れ替わって垢(あか)がでます。ふけも古くなった頭皮です。新陳代謝とは古い細胞がコピーされ新しい細胞に変わることをいいます。これは皮膚だけでなく、すべての細胞で起こっており、そのサイクルは概ね90~120日程度だと言われています。 このように私たちの体の細胞は毎日あらゆるところで寿命を迎え、新しくコピーされた細胞と入れ替わっています。 しかしこのコピーがうまく行かずミスコピーが起こるときがあります。60兆個もの細胞の一部から生まれるミス。これが実はがん細胞のはじまりなのです。そして、このミスコピーは毎日、私たちの体の中で起こっているのです。大体1000~5000個のがん細胞が、日々私たちの体の中で出来ていると考えられています。なぜ、がんにならずに済んでいるのでしょうか。実際にがんとして発症するのは65歳以下では10人に1人、74歳以下では5人に1人です。これにはもちろん理由があります。 それは、私たちの体の中にはシュレッダーの働きをするものがあるからです。それがリンパ球とよばれる白血球の一種です。私たちの体内でできたミスコピーは通常リンパ球と呼ばれる白血球の一種によってシュレッダーにかけられたように消去されていきます。1000個できても、5000個できても、一つ残らず、完璧に消去されてしまいます。 しかし1個でもがん細胞が残ってしまうと、どうなるでしょうか。がん細胞は2個、4個、8個、16個と倍々に分裂していきます。 それの細胞の数が10億個、直径が1cm、重さが1gになるとレントゲンやCT、内視鏡検査などの画像検査で発見されるようになります。そこで初めて『がん』という病名が告げられるのです。『ミスコピーされた細胞を一つでも残してしまうことががんの原因になる』少し乱暴なストーリーですが分かりやすく言うとこれががん発生の基本的な考え方です。
ではミスコピーの細胞が残る理由は何でしょうか。
① |
ミスコピーが多くシュレッダーが間に合わない場合。これはがん細胞がたくさんできている場合を指します。 |
② |
シュレッダーの性能が低下している場合。がん細胞を殺せない。つまりこれは『免疫機能の低下』を指します。 |
私たちの体の中で免疫を担当するのは白血球です。 白血球の中にはいろいろな種類の細胞がありそれぞれ担当が異なります。
細胞の種類 | 特 徴 | ||||||
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白血球 | 血球系 | 好中球 | 病原体の侵入に真っ先に駆けつけ食べる異物を処理した好中球が膿となる 。 | 自然免疫 | |||
好酸球 | |||||||
好塩基球 | |||||||
マクロファージ | 細菌、感染した細胞、ほこり、死んだ細胞などを食べる大食い細胞。 | ||||||
樹状細胞 | 病原体を食べT細胞に情報伝達する係。 | ||||||
リンパ球系 | NK細胞 | ヘルパーT細胞の命令なしで独自に攻撃をしかける『生まれながらの殺し屋』。 | |||||
B細胞 | ヘルパーT細胞の命令を受けると大量の病原体にあわせた抗体を放出する。1度戦った相手を記憶し次回からは素早く抗体を出す。 | 獲得免疫 | |||||
T細胞 | ヘルパーT細胞 | マクロファージ、樹状細胞から情報を得てB細胞やキラーT細胞に攻撃を命令する司令塔。 | |||||
キラーT細胞 | ヘルパーT細胞の命令で異物を攻撃する主力部隊攻撃すべき細胞と1対1で戦う。 | ||||||
サプレッサーT細胞 | 相手がほぼ全滅するとヘルパーT細胞の活性をおさえ、B細胞や キラーT細胞に活動を中止させる。 |
この中でがんに対して攻撃をする免疫細胞は自然免疫であるNK細胞と獲得免疫であるT細胞系しかありません。 よく耳にする樹状細胞はT細胞に情報を伝える係を担当しますのでT細胞系と考えてよいと思います。 では双方の特徴を見ていきましょう。 まずは治療におけるT細胞の問題点を示します。まずT細胞に敵(がん)を覚えこませないと敵を認識することができません。がんが転移をしたりしてT細胞が覚えこんだがんと少しでも顔つきが変わってしまうと全く攻撃をしなくなってしまいます。またT細胞を培養した際にすべてがんを攻撃するT細胞が培養されるわけではありません。培養したキラーT細胞が何を攻撃するのかは培養してからではないとわからないという欠点があります。次にNK細胞の問題点を示します。NK細胞は培養が難しく数を増やすと活性が低下してしまうという性質があります。しかしNK細胞はNatural Killer細胞の名前の通り『生まれながらの殺し屋』なのです。 免疫細胞治療に携わる者すべてが本当はNK細胞を使いたいのに技術的な問題でT細胞を使っているというのが現状です。 しかし京都大学の研究者がこの難題に取り組みNK細胞の活性を最大に保ちながらNK細胞だけを増殖させる培養に成功しました。この技術をがん治療に利用しご自身のNK細胞を体外に取り出し培養し体内に戻す治療法ができました。これがANK療法です。 ANKのA はAmplifiedのAで『活性化され、増殖された』という意味があります。ANK療法の培養はすべて京都にある培養センターで行われます。当院はここの培養センターと提携して免疫細胞療法をしております。ANK細胞の働きはがん細胞に戦いを挑み、がん細胞を直接殺傷する働きとサイトカインを介し、もともと体内に存在する弱ったNK細胞を刺激し活性化し仲間を増やしがん細胞を攻撃します。 このようにNK細胞はがんに直接攻撃を仕掛けることと、弱った仲間を強くし一緒にがんを攻撃する仲間をつくる二次攻撃でがんに仕掛けます。
1. |
面談: ANK療法担当医医師より本治療の説明をいたします。面談はきし整形外科内科で受けていただきます。 ※面談を済まされ、ANK療法を受けられる場合は、リンパ球採取か採血かを選択していただきます。本治療は複雑な工程が組み込まれているため高額な費用が必要です。ところが健康保険の適応はありません。この点をお含みいただき、同意書の提出と培養費用のお支払いをお願いしています。なお本治療は医療費控除の対象となります。 |
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2. |
リンパ球採取・採血: 採取とは専用装置を使い血液からリンパ球だけを分離する方法のことを言います。リンパ球採取は専用装置を設置している医院で行います。 私たちの体の中には私たちの体の中には、がん細胞を殺傷するリンパ球が存在します。ところが、がん患者様の場合は、数が減っているうえ、弱っており、がんを殺せなくなっているのです。体内のリンパ球を薬剤などで強くする方法がいろいろと試みられましたが、体の仕組みは複雑でその効果を打ち消すように働き、なかなかうまくいきません。今のところ、リンパ球を体外へ取り出して、増殖刺激と活性刺激を加え、培養する方法が一番有効と考えられています。リンパ球の中でも、最も、がんを殺傷する力が強いNK細胞を増殖、活性化させるのは大変な手間と技術が必要で、培養にも時間がかかります。そのため、少しでも多くのリンパ球から培養を始める方が好ましく、沢山の血液からリンパ球を分離採取しリンパ球以外の血液成分は体内に戻すリンパ球採取を基本としております。抗がん剤治療の副作用で貧血がある方には特にお勧めしています。ただし、リンパ球採取を実施できる医療機関は限られており、体調により採取先の医療機関への移動が困難な方は、通常の採血(全血)も行っております。採血の場合は、培養を開始する時点のリンパ球が少なくなりますので、培養期間も長くなります。また一度に大量の採血が困難な場合、何回かに分けて採血する場合もあります。体調をみながら工夫しますので医師にご相談ください。また採血からリンパ球を採取する場合は費用はいただいておりません。 |
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3. |
培養: 採取されたリンパ球は、当日中に京都培養センターに届けられ培養工程に入ります。 到着した当初は数もまばらで、形も不揃いですが活性化されると形も丸く整ってきます。 治療回数、採取方法(採取できるリンパ球の量)によって培養期間は変わります。
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4. |
点滴: 増殖・活性化したリンパ球を点滴で体内に戻します。 点滴の間隔は週2回が標準ですが、患者様の状況により異なります。詳しくは、ANK療法担当医師にご相談ください.また、抗がん剤や、放射線療法等との併用についても、ご相談ください。 点滴は当院以外でも可能なことがあります。但しANK療法の点滴を行う医療機関はANK療法を実施する届出を国に受理されている必要があります。詳しくはお問い合わせください。培養されたリンパ球(治療用リンパ球)は、1回分を点滴用にパックし、その都度、患者様のもとへ届くよう手配いたします。 ※一般に免疫細胞療法は、副作用がほとんどないことが特徴の一つとされておりますが、ANK療法は、強力に活性化されたリンパ球を体内に戻しますので、他の免疫細胞療法ではみられないレベルの発熱を伴い、また人によっては激しい悪寒を生じます。これは、大量のサイトカインという免疫刺激物質を放出する影響によるものです。サイトカインは、体内に残っている多くのリンパ球に対して活性化を促します。体内のリンパ球と治療用リンパ球の活力の差が大きいほど高い熱が出ます。 |
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5. |
終了: 効果判定は画像診断、血液中の腫瘍マーカーの増減、その他臨床上の諸症状を加味して判断され ますが、患者様個々のケースにより大きく異なります。 |
治療費が高額という問題もあり積極的にもう1クールしましょうと言いにくいのが現状です。 そこで考えられたのは『分子標的薬』の併用です。 がん細胞はある抗原から信号を受け取り、栄養を取り込んで増殖します。分子標的薬の中にはがん細胞の抗原にくっつきその信号を遮断する分子標的薬があります。 分子標的薬を使いくっつきをうまく遮断すれば、がん細胞は栄養の補給路を断たれます。いわゆる兵糧攻めの完成です。しかし分子標的薬にはがん細胞を殺傷する働きはありませんので、殺傷できるもの(ANK細胞)と一緒に使用する必要があります。ANK免疫細胞療法は現在注目を浴びているトラスツズマブ、セツキシマブ、リツキサン等の分子標的薬とも相性が良く、抗体発現をされている患者様に対して、より効果的な治療を行うことができます。
細胞や病原体にある種の抗体が結合すると、その抗体がマクロファージやNK細胞といった免疫細胞を呼び寄せます。そしてその抗体が結合している細胞や病原体を殺傷します。 特にNK細胞は、抗体のFc部分に結合するサイトをもっておりADCC(Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity : 抗体依存性細胞傷害)活性が誘導されます。 ADCC活性が得られるのはリンパ球細胞の中ではNK細胞の特徴の一つです。T細胞にはほとんど見られません。ADCC活性を誘導できれば、より効率よくがんを殺傷していくことができます。 よってANK免疫細胞療法を受ける前にADCC活性を作用メカニズムとする分子標的薬を使用する方が良いかどうかを調べることをお勧めします。 分子標的薬を使用すると実験レベルでは倍近い細胞傷害活性が得られます。
提供元:リンパ球バンク(社内比較データです) 体外培養によって研究用の標的がん細胞を制限時間内に傷害した割合を測定したものであって体内でも同じデータになるという保証はありません。標的がん細胞には、トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)の標的物質であるHER2を細胞表面に大量に発現しているものを選んでいます。(HER2を発現しないがん細胞にはこの様な影響は表れません) T-LAKは一般的な免疫細胞療法ですが、キラーT細胞が多い目に増殖する様な条件を加えたものです。NK細胞療法というのは一般的な免疫細胞療法です。 ■副作用 点滴の度に発熱など何らかの免疫反応を生じます。発熱はほぼ必発ですが、それ以外の免疫反応の出方は様々ですので詳しくは医師から説明があります。発熱などの反応は培養されたANK細胞が体内で放出する免疫刺激物質によるもので、一過性のもので時間が経てば自然に治まります。
今、免疫細胞治療と呼ばれている治療法はいろいろな医療施設で施行されております。 しかしその大半がT細胞系による免疫細胞治療です。NK細胞療法という名称であっても一般的な免疫細胞療法であり、NK細胞も含まれてはいますが培養細胞の多くがT細胞です。
ANK免疫細胞療法は一般的な免疫細胞療法とは大きく異なります。
あれこれ悩む前にまずは面談をお申し込みください。 面談を受けたから治療を申し込まなければいけないということは一切ございません。